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梅干しは腐らないはず…
でもけっこう腐るよね???
その通り。
“梅干し”と呼ばれているものは幅広く、
いろいろな種類があります。
だから腐りにくい梅干しと、
腐りやすい”梅干し”の両方あるんですよね。
本来の梅干しは
保存食として昔から作られてきました。
夏場のめちゃくちゃ暑い時期でも、
冷暗所で保存されて、腐ることなど
ないかのようであった梅干し。
しかし現代ではどうでしょう?
スーパーなどで安く売られている
市販の”梅干し”は、
保存方法を守らないとあんがい腐りやすい。
また、嗜好品として
値段の高い”梅干し”も同じく痛みやすい。
現在の”梅干し”は、
昔のように冷暗所では品質が保てず、
冷蔵保存のものが多いのです。
そして冷蔵庫で保存していても、
そのうち傷んでしまう。
対して、昔からの製法で作られた梅干しは
なぜ常温でも腐らないのでしょうか。
今回は、梅干しって腐らないの?
というその理由と、
痛みやすく腐ってしまう”梅干し”について
書いていくことにします。
そもそも食品が腐る理由
まずはじめに、食品が腐る、腐敗する
ということはどういうことなのでしょうか?
これを知っておく必要があります。
腐敗とは
腐敗とは、空気中にいる細菌などの微生物が
食品などの有機物を分解することで
変質させてしまうこと。
変質すると人にとって有害な物質に変化して
しまうので、食べられなくなるわけです。
食品を分解する微生物などが活発に働く
ためには、エサとなる有機物の他に
次のものが必要です。
- 水
- 空気
- 程よい光と温度
まるで動物や植物と同じようですよね。
微生物も人と同じように生きています。
これらの条件が揃っているところに
食品を置いておけば…
そしてその食品にいつでも
微生物がくっつける状態であれば…
食品はそのうち分解されて
腐ってしまうのです。
もちろん、生の梅も梅干しでも同様に。
梅が腐敗するとき
梅に対してちょっかいをかけてくる微生物は
酵母菌。
目には見えなくとも、
そこら中にたくさんいるし
梅の表面にもくっついているようです。
酵母菌が繁殖すると白いカビが出てきます。
この酵母菌自体は無害なもののようですが、
これを放置しておくと毒素を出すような
他の菌も増殖して、いよいよ腐敗していって
しまうのです。
生の梅の実は腐りやすい。
しかし梅干しにすると、腐りにくくなる。
昔の人の知恵ってすごいですよね~。
梅を腐らせないためには、
あらかじめ微生物を極力減らした上で
微生物が繁殖するための条件を
できるだけ排除することが大切なのです。
梅干しが常温でも腐らない理由
さきほどの微生物の話からすると、
腐らせないための条件を満たせば
いいんじゃないかと考えますよね。
→水、空気、程よい光と温度を遮断する。
もちろんこれらも必要なのですが、
それだけで長年腐らせないようにするのは
とても困難。
梅干しの場合、長年保存ができる
不可欠な理由が他にあるわけです。
それは、塩と梅の成分、ぷらすα。
塩の保存性
塩は保存食を作るために
古くから用いられてきました。
塩は食品の水分を出して微生物の活動と
増殖を抑える働きがあるため、
保存性が上がるのです。
塩の量
梅干しを作る時にはまず、
生の梅を塩で漬けます。
酵母菌を抑制するためには少なくとも
梅の重量の18%の塩分が必要で、
浸けムラを考えると20%で漬けるのが
妥当だということです。
さらに梅干しが傷まないように厳密に考える
なら、梅干しが出来上がったときに
梅干し内の塩分が何%になっているのか
ということが大事で、
たとえば梅を20%の塩で漬けたとしても、
全ての塩分が梅に残るわけではないです
からね。
梅から抽出される汁(梅酢)に溶け出す塩分も
あるので、そのぶん梅の内部に留まって
保持する塩分量は薄くなるわけですから。
まぁ細かいことは置いておいても、
梅に対して塩が充分である必要がある
ということです。
<塩の濃度が気になるなら関連記事もどうぞ>
→梅干しが腐らない塩分量はどのくらい?
梅の成分
梅干しが長期保存できるのは、
塩のおかげだけではないのです。
先ほど、生の梅は腐りやすい
と書きましたが…
じつは梅ってもともと、
保存性の高い成分を持っているのです。
梅には有機酸という酸が含まれており、
主にクエン酸、リンゴ酸などですが、
これらの酸は強い抗菌作用を持っています。
梅干しが腐らない理由は、この梅の成分と
塩との強い作用があってのことなのです。
天日干し
そして最後にもう一つ。
梅干しが常温でも腐らない理由について
重要なものがあります。
それは天日干し。
生の梅を多めの塩で漬け込んで
梅の水分を出し、
塩気がまわったところで天日に干す。
数日間干すことによって
余計な水分を出してしまい、さらに
太陽の紫外線で殺菌までしてしまう。
梅に残るのは、
凝縮された梅の成分と濃いめの塩分。
この状態で適切な保存をすれば、
梅干しは常温(冷暗所)で長期間腐ることなく
いつまでも食べられる状態のままに
保持できるのです。
腐りやすい梅干し
では腐らない梅干しに対して、
腐りやすい梅干しとは?
もうおわかりですよね。
答えは単純。
保存性を高く保つ条件が崩れたとき。
おさらいすると、
昔ながらの製法で作った
梅干しの保存性が高いのは…
- 塩の保存性(脱水と微生物の抑制)
- 塩の量(濃度が濃い)
- 梅の成分(抗菌作用)
- 天日干し(乾燥と殺菌)
これらの条件が揃っているからです。
つまり、あまり日持ちしない”梅干し”は
これらの必要な条件が足りていないから。
塩が足りない、梅の成分が足りない。
減塩”梅干し”はそういうことです。
減塩でも腐りにくい”梅干し”その理由
減塩で作られる”梅干し”の作り方には
大きく分けて二通りありますが…
結果として、本来の梅干しと比べて、
次のように足りないものがあるわけです。
- 塩の量が足りない
- 塩の量と梅の成分が足りない
aは、塩を減らして作る製法
bは、従来どおりに梅干しを作ってから
塩抜きして調整する製法
従来どおりに作れば何も問題ないけれど、
塩の量が気になるという場合には
どちらにしても保存性を欠くものを
選ぶことになります。
しかし市販の製品では少なくとも、
数カ月間は保つように作られていますよね。
そこには腐らせないための、
保存性を高めるための工夫…
というものがあるわけです。
手作りの減塩梅干しでは、
塩を減らす代わりにアルコールや酢、
砂糖などを添加して作ったりします。
市販品の場合はこれらの他に、
食品添加物や他の添加物などを入れることで
保存性を保持しているものも多い。
それでも、本来の梅干しのように
長期保存とはいかないのですよね。
また、梅干しは本来、
「家庭の常備薬」と言われるほどの食品。
身体にいいものとは何なのか
ということを考えれば、
何を選べばいいのか
自ずとわかることでしょう。
後記
梅干しは腐らない?
じゃあなぜ腐るものがあるの~?
ということで書いてみましたが、
昔からの保存食である梅干しは
保存食足り得る理由があったのです。
昔ながらの製法で作られた梅干しは、
ちゃんと理由があって、何年、何十年と
腐らないまま保存ができてしまうのですよ。
まぁ、何百年…という時を経るほど
保たせなくてもいいでしょうけどね。
梅干しってそれだけすごい、
まさにスーパー保存食なのですよ。
それが近年…というかずいぶん経ちますが
減塩ブームが何十年と続きまくっていて、
その減塩思考から、
塩とともに梅の成分まで抜けてしまうような
製法で作られているものも多いという
現状なわけですが…
以前と比べればまた随分変わってきており、
減塩ではない従来の梅干しも
多く市販されてきているので、
最近はいい傾向だなぁと思っています。
それでは今回はこのへんで。
ここまでお付き合いくださいまして
ありがとうございます。
あなたの梅干しが、
最後の一つまで美味しく食べることが
できますように。
ではごきげんよ~うヽ(´ー`)ノ