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梅干しを漬ける前に、しておかなければならない場合のある「追熟」。
この「追熟」について、書籍などでは淡々と書かれているのですが、実際にやってみると、いろいろとわからないことが出てきます。
そして気づけば傷んでしまったり、腐らせてしまうことも…。
そんな失敗を極力なくすため、どうすればうまく追熟するのか、そもそも追熟とはどういった変化が出て、どのようになったら成功なのか。
詳しく調べてみることにしたので、順を追ってご紹介します。
追熟の方法だけ知りたい場合は「4. 追熟する」までワープしちゃってくださいね。
では張り切っていきましょ~^^
追熟とは何か
そもそも追熟とはなにか?
普段からみんな何気なくやっていることですが、果物を買ってもすぐ食べずに「食べごろまで置いておこう…」というのが追熟です。
果物は完熟前の未成熟のうちに木からもいでしまっても、しばらく置くことで追熟され、果肉が柔らかくなったり甘くなったりしていきます。
この「追熟」は果物が皆そうであるわけではないのですが、梅は追熟する果物なので、しばらく置いておくと自然に成熟していきます。
そう、自然に成熟…されるはずなのですが、環境を整えてあげないとなかなかうまくいかなかったりするのです^^;
スーパーなどで売られている梅はきれいに黄色くなっているものがあります。
追熟がうまくいかない…というならこれを購入するのが一番いいですが、手に入らない場合や、黄色になりきらない状態の梅を買った場合には、購入後に自分で追熟することになります。
追熟するか、しないかの判断
追熟するかしないか、というのは梅で何を作るのかによります。
もちろん梅の状態にもよるのです。
(1)まずは、何を作るか
完熟梅や黄梅(黄熟した梅)がいいといわれているのは梅干しですね。
梅干しにしたい梅がまだ青いのなら、追熟をしましょう。
(2)追熟が必要な梅ってどんなもの
追熟が必要なのは青い梅。
青さにもいろいろとありますが、新鮮な青梅は濃い緑色をしています。
そして徐々に熟していくに従い、色が薄くなり黄色くなっていきます。
どのくらいが適度なのかはむずかしいところですが、全体の色が薄くなって黄色味を帯びてくればいいでしょう。
そのくらいになれば、実も硬すぎず表面が少し柔らかくて弾力のある感じになります。
そのような状態にまで至ってないものは、追熟をするようにしましょう。
あまりに柔らかくなりすぎると梅干しにするのも難しくなったりするので、早めに見切りをつけて漬けてしまいましょう。
遅くなりすぎるよりは、早めに漬けてしまうほうが失敗が少ないのです。
梅の追熟
梅は何故追熟するのかについて書いていきます。
追熟する理由などを知ると、いろいろなことがわかって安心です。
梅はどうやって追熟するのか
梅は成長を促進する植物ホルモン「エチレン」を自己発生させます。
バナナをエチレンガスで追熟させて黄色くするのと同様のエチレンです。
りんごと一緒に入れると追熟が早まるよ~というのとも同じです。
梅は成熟時に酸素を吸い、二酸化炭素を排出する呼吸を行います。
成熟時に呼吸量が増える果実は、クライマクテリック型果実と呼ばれ、その多くは呼吸が増えるに従い、エチレン生成量も増えていくのです。
つまり追熟するにつれ、追熟の速度は早まります。
収穫時期によって追熟の速度が変わる
梅の成熟は全て同じではなく、梅によって状況は違います。
ア. 青い状態で収穫され、その後追熟するもの
イ. 樹上である程度熟した後に収穫され、その後追熟するもの
ウ. 樹上で成熟し自然落下したもの(完熟梅)
ウ.の完熟梅はもう充分熟し終えているので、あとは劣化する一方。
すぐに漬け込んでしまわないといけません。
柔らかい梅干にするにはウが理想ではありますが、お店に並べるのは無理なのでネット直販でしかなかなか手に入らないのです。
ですので、スーパーなどで購入するのは殆どアかイでしょう。
梅はどれも同じタイミングで育つわけではないので、同じ袋に入れられた梅が全て同じタイミングで熟すわけでもないのです。
アよりもイの梅の方が、追熟が始まるタイミングが早いようです。
環境によって変わる追熟
(1) 温度は適切に
追熟に適した温度は20~30度
温度が低くなれば追熟はゆっくり進み
逆に温度が高ければ早く追熟が進みます。
温度が上記より低すぎる状態になると、低温障害になってしまうこともあります。
お店で売られている梅は、貯蔵時に寒い場所で温度管理をされている場合もあり、もし低温障害になっている場合にはうまく追熟できないものもあるようです。
梅の旬である6月の季節は、気温はだいたい20度前後でしょうか。
極端に寒い・暑いがない頃なので、追熟には常温が適温だと思います。
梅が育つ環境も常温ですしね。
人も極端な寒暖差を嫌いますが、梅も同じということでしょう。
(2) 酸素をください
梅は成熟時に呼吸をします。
収穫後に袋詰にされていると、追熟が始まっていない数日間はもちますが、追熟が始まり呼吸が活発になると、袋の中の酸素が減り二酸化炭素濃度が増えます。
すると梅は生理的な代謝が行われないために異常を起こして脱水してしまい、しまいに腐敗してしまうのです。
また、エチレンを除去する袋もあるようですが、効果は一時的。
通常のポリ袋よりは数日長くはもつようですが、入れ続けると腐敗の原因になります。
梅を買って持ち帰るまで、すでに袋詰めされて何日経っているか不明ですので、まずは袋から出してあげましょう。
(3) 湿度も大事
追熟中にはある程度の湿度も必要です。
追熟中にも梅の水分はどんどんと空気中に蒸散してしまいます。
この水分を逃さないようにするのも大事です。
水分が逃げるがままに放置してしまうと、瑞々しさがなくなるどころか、梅が全体的に乾いてしまいます。
追熟前と後とで重さを量ると、驚くほど水分が抜けているのがわかります。
また逆に、水分が過多になってもカビの原因になるので注意が必要です。
追熟の期間
梅は通常、青梅の状態で収穫・出荷されるようですが、運送などで数日を要し店頭に並べられます。
また、お店でも仕入れからどのくらい経過しているのか、まちまちでしょうから、家で何日置いておけば追熟完了、と簡単にはいかないものです。
追熟の判断については先に書きましたが、もう一度繰り返します。
・実が柔らかくなっていれば遅いくらいなので、すぐに漬けてしまいましょう。
・色は薄く黄味を帯び、表面が少し柔らかめで弾力のある感じであれば、漬けてもいいでしょう。
・まだ色が青みを帯びているようなら、あと1~2日くらい。
・青々としているのなら、さらに数日、毎日様子を見ながら追熟をしていきます。
追熟する
いよいよ追熟をしていきましょう。
追熟は、梅の状態を確認して環境を準備してあげるだけ。
むずかしいものではないのです。
追熟をする前に
追熟をする前には…
・梅に傷みがないかを確認する
潰れているものやカビっぽいもの、変色しているものなどは外してしまいましょう。
傷みのある梅を一緒に入れてしまうと、他の梅にも影響してしまいます。
・未熟な梅は外す
青い梅の中でもおしりが尖っているようなものは未熟果であり、追熟しないまましわしわになったり変色してしまうことがあります。
・水に浸けない
水に浸けるなどはしないようにしましょう。
ほかの一切の作業は追熟した後からおこないます。
追熟方法
追熟方法は2つ。
基本的には道具が違うだけで同じなので、やりやすい方を選ぶといいでしょう。
(イ) ダンボール箱を使う
1. 乾いているダンボール箱の中に新聞紙を敷く
2. 梅を平らに広げて入れる
3. ダンボール箱の蓋はゆるーく、半開きにしておく
4. 陽が当たらない風通しのよいところにおく
ダンボールがない場合はスーパーなどで貰えるので、買い物に行ったときなどに聞いてみるといいでしょう。
ダンボールが濡れていたら、よく乾かしておきましょう。
梅は多少重なっても大丈夫ですが、あまり重ねると湿気からカビが出ることもあるので注意が必要です。
箱が小さく、梅を重ねて入れざるをえないときには、時折箱の中を開け、梅に空気を通してあげましょう。
異変が出ていないか、日に一度は梅の様子を見てあげましょう。
(ロ) ザルを使う
1. 乾いた竹ザルを用意
2. 梅を平らに広げて並べる
3. 梅の上に新聞紙を広げてかける
4. 陽が当たらない風通しのよいところにおく
金ザルはやめておきましょう。
プラスチックのザルなどは、風通しのよいものなら大丈夫でしょう。
目が細かく風通しのよくなさそうなものは使用を避けましょう。
新聞紙は梅の水分の蒸散を防ぎ湿度を保つためと、エチレンを分散させないためのものなので必ずかけてあげましょう。
梅の重なりについては上記と同様。
あまり重ならないように並べるのがいいですが、重なるならば時々空気を通してあげましょう。
追熟を完了する目安
どんな状態になったらいいのか、目安はあるか?
すでにちょいちょい書いていましたが、まとめて書きますo(^-^)o
(1) 梅の色: 薄い黄色みを帯びてきたころ
おそらく完熟させると聞くと、きれいな黄梅になるのを想像するかもしれません。
しかし実際は、なかなかきれいに黄色くなるということも少ないのですよ。
収穫時にどのくらいの成熟段階で収穫されたのか、ということにも関係があるようです。
梅は青色(緑色)から徐々に色が抜けて薄い黄緑色になり、黄色くなっていきます。
黄色といっても濃くなく、だいぶ黄色くなってきてるよね~という感じの色。
どのあたりでよしとするのかの見極めが肝心です。
(2) 梅の硬さ: 表面が柔らかめで弾力のある感じ
新鮮な青梅はけっこうガチガチのつやつや。硬いよ?青いよ?という感じ。
しばらく日が経ち色が抜け、黄緑色になってくると輪郭も少し柔らかになり、青梅のときの表面のがっちり感がなくなります。
そして黄みを帯びてくると更に見た目でも柔らかな雰囲気に。
触ると外側はゴムボールのように柔らかめの弾力があるが、芯はしっかりしているという程度のものがちょうどいいかなと思います。
梅干しにする場合でも、あまり柔らかすぎるものよりは少々硬さの残る感じがある方が漬けやすいです。
(3) 香り: 桃のようなフルーティーな香り
青梅はフレッシュな青りんごのような香り。
それが徐々に変化し、熟すと桃のようなフルーティーな香りが漂います。
この香りが漂えば、だいたいいい感じに追熟しているかと思います。
目安としては、このあたりでそろそろかな~と。
この後あまり長く置きすぎると、この香りは消えていきます。
香りがなくなると、あとは腐敗していくのみです…(;_;)
おわりに
梅の追熟方法だけでもいいようなものですが、あえていろいろと事細かに書いてみました。
書籍でもなんでも、書いてある方法を実際にやってみると思わぬことが起きたりするものです。
そのとき、追熟を実施する方法しかわからなければ、解決方法がわかりません。
しかしいろいろなことを知っていれば対処のしようもあるし、もし失敗したとしても原因を考えることができ、次に活かすこともできます。
そして意外と、知らなかったことで失敗することも多いのです。
こうなるはずだ、という思い込み。
たとえば、完熟するときれいな黄色になるはずだ、まだまだ追熟させないと…
私は以前そう思い込んで、漬ける時期を逸した経験があります。
知っているのと知らないのとでは、対処が変わってきますよね。
追熟自体は難しい作業ではないので、ぜひやってみてください。
理解して行うと、こんな簡単なことなのか…と思いますよ。
さて、今回はそろそろこのへんで。
長々と書いてしまいましたが、ここまでお付き合いくださいましてありがとうございます。
追熟するときには、梅ちゃんの様子を時折見てあげましょうね~ヽ(´ー`)ノ