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梅と杏(あんず)とは、一見よく似ている。
とてもよく似ているので、
地域によっては梅も杏も同じように
扱われることもありますが、
別の植物として区別されています。
梅と杏の共通点は多く、
見分けづらいけれども違いはあります。
ただ、梅と杏とは近しいがために
交配しやすく、品種によっては区別が
付きづらいものもあるのです。
現に梅と杏との交配種があり、
有名なところでは南高梅がありますよね。
梅と杏はどちらかわからなくても、
梅として漬けても問題ないようです。
北の方では杏で梅干しを漬けるとも
聞きますしね。
漬ける上では見分けが付かなくても
いいのかもしれない^^
それでも違いについて知りたいので、
梅と杏の見分け方や違いについて
調べていきますよ。
それでは、いってみましょ~。
杏とは
〔名称〕アンズ
漢字では「杏」、「杏子」とも書く。
また、別名「唐桃(からもも)」とも呼ばれ、
英名ではアプリコットという。
杏は中国原産といわれており、
中国から日本へ渡ってきた。
日本最古の本草書(医薬書)である
「本草和名」(918年/平安時代)には、
すでにアンズの名が記されいます。
当時、杏は観賞用や薬用として用いられ、
栽培されていたようです。
〔分類〕
杏はバラ科サクラ属。
梅は同じくバラ科のサクラ属。
あるいはスモモ属やアンズ属など、
分類については諸説があります。
杏仁
杏仁(きょうにん、あんにん)という言葉を
聞いたことがあると思います。
デザートの杏仁豆腐の、杏仁。
仁(さね)とは、
種子(核の中にある白いもの)のこと。
杏の仁なので、杏仁という。
本来、杏仁豆腐は杏仁を粉にした杏仁霜を
使って作るものだそうです。
日本では杏仁を使っていない”杏仁豆腐”が
多いようですが…。
杏仁には二通りがあります。
- 苦味が強く、薬に用いられる
「苦杏仁(くきょうにん)」 - 甘みがあり、食用に使われる
「甜杏仁(てんきょうにん)
仁は杏のみでなく、バラ科の植物である
梅、桃、アーモンドなどにもあります。
杏と同じく、梅や桃の仁も核の中にあり、
アーモンドの場合は食用の部分そのものが
仁です。
苦杏仁や梅仁(ばいにん)、桃仁(とうにん)は
漢方薬として用いられ、
それぞれ異なる薬効を持っています。
ちなみにアーモンドにも二種があり。
ビターアーモンド(苦扁桃仁)にも薬効がある
ようなのですが、毒性が強いために日本では
輸入禁止。
通常食べているのは、
食用のスイートアーモンド(甘扁桃仁)です。
バラ科植物の仁は、青酸配糖体(アミグダリン)
という毒になる物質を含有しているため、
加工していない生の状態の仁を摂取するのは
やめましょう。
梅と杏の違い
梅と杏、それぞれの使い方というのは
もちろんあるのですが、杏を梅と同じように
加工して使うこともあります。
というのも、東北・北海道地方では
その気候から、梅より杏が主流であり、
梅であっても杏に近い種類を用いて
梅として同様に扱っていたようです。
梅
〔食べ方〕
梅は基本的に生食はしない。
そもそも青梅の場合は酸味が強いために、
生食してもあまりおいしくはない。
(熟したものは品種によっては甘酸っぱい)
というより、若い梅には少量の青酸が
含まれるため、生食はおすすめしない。
青酸は加工することで徐々に分解されて
無毒化するため、梅は漬けたり煮たりと、
主に加工して使うのです。
〔使い方〕
梅干し・梅漬け、シロップ漬け、梅酒、
味噌漬け、醤油漬け、はちみつ漬け、
カリカリ漬け、梅エキス、梅ジャム、酢漬け、
煮梅など。漬けても煮てもよい。
〔栄養〕
有機酸(クエン酸・リンゴ酸)
カリウム
ミネラル
ムメフラール
などなど。
食欲増進、整腸作用、疲労回復、鎮痛作用
制菌作用、虫歯予防、インフルエンザ予防
ピロリ菌の増殖抑制効果、胃がん予防
がん細胞の増殖を抑制
血糖値を下げる、糖尿病予防
血流を改善など。
杏
〔食べ方〕
杏も梅と同じく酸味が強く、
生食より加工が中心。
なかには生食用の
甘い品種の杏もあるようです。
杏は日持ちがしないため、
生の杏が手に入る地域は限られるようで、
ほとんどの地域では、杏といえば干し杏か
シロップ漬けの杏ではないでしょうか。
〔使い方〕
梅と同様、様々な加工に使える。
干し杏、シロップ漬け、しそ漬け、
あんず酒、杏仁酒、コンポート、ジャム、
タルトなどの洋菓子などに。
〔栄養〕
杏は生より干したものがよく食べられる。
干し杏のほうが栄養が凝縮される。
しかし糖分も凝縮されるため、
カロリーも高くなる。
βカロテン
食物繊維、
有機酸(クエン酸・リンゴ酸)
カリウム
ギャバ(γ-アミノ酪酸)など。
抗酸化作用、免疫活性作用、発がん抑制作用
美容効果、整腸作用、殺菌作用、疲労回復、
食欲増進
不要なナトリウムを排出、鎮静、血圧降下
作用など。
また、鎮咳、去痰、鎮静作用など。
梅と杏の見分け方
梅と杏はかなり似ている。
一番見分けが付きそうなのは、
花か実でしょうか。
しかし品種が交じったものなら、
見分けることは困難だといいます。
梅と杏のちょっとした差をお楽しみください。
花
梅も杏も、花だけ先に咲く。
梅は1つの節に花が1つ。
花柄はほぼない。
杏は1つの節に花が複数。
花柄は短い。
杏の花は梅より大きく、
花びらはどちらも丸い。
花が咲くと、
杏は萼(がく)が反り返るが、
梅は反らない。
梅は香りがいいが、杏は香らない。
開花は地域にもよるが、
梅に遅れて杏が咲くのは3月くらい。
実
実の収穫時期も梅が早く、5月~6月下旬頃。
杏の実の時期は6月下旬~7月中旬頃。
これも地域によりずれる。
杏の産地は主に、長野県・青森県。
見た目は小さい桃のようで、黄色い。
杏は種離れがよく、果肉が剥がれやすい離核。
対して梅は、種から果肉が離れにくい粘核。
これは割ってみないとわからないですね。
葉
梅と杏は、葉も似ている。
梅も杏も、花が終わってから葉が出る。
梅は卵形か楕円形。先端は長く尖る。
杏は少し幅広の円形で、先が短く尖る。
杏の葉には毛があるが、梅にはほとんどない。
杏は梅より葉柄が長い。
ちなみに桜は、花が先に咲き、ずれて葉が出る。
桃は花とともに葉が出る。
梅と杏の分類
日本の梅は、梅と杏が交じった種が多い。
梅と杏とは系統が同じで交わりやすく、
花咲く期間が同じであれば
自然に花粉を受粉して交雑される。
また、人工による交配も
多く研究されているのです。
梅と杏の交じり具合を分類したものがあります。
〔梅と杏の分類〕
[純粋梅]←[杏性梅]←[中間]→[梅性杏]→[純粋杏]
純粋梅 | 小梅・青軸・小向・野梅など |
杏性梅 | 白加賀・長束・藤五郎・南高など |
中間系 | 養老・紅加賀・鈴木白・太平など |
梅性杏 | 小杏・豊後・高田梅など |
純粋杏 | 平和・新潟大実・李小杏など |
梅と杏の間の品種のことを、
杏梅(あんずうめ)とも呼ばれている。
さらに種類が違えば種も違うため、
種(核)の形態によるウメの分類というものも
あるようです。
たしかに、梅を食べた後に残る種を観察して
みると、あきらかに形状の異なるものがある。
種だけを集めてみるとわかりやすく、
見比べてみるとなかなか面白いですよ。
後記
さて今回は、梅と杏の違いについて
調べてみましたよ。
梅も杏も似たもの同士。
どちらも似た栄養素があり、
健康効果があるようですね。
ただ、こういった健康効果のあるものは
日々継続的に摂取して効果があがる
というもの。
一度に多く摂取してしまうと
影響が強いこともあるため
多食しないようにしましょう。
生の杏というと、
やはり広くは出回らないようです。
ウチは産地が遠いためか、
おそらく食べたことはないかな。
干した杏は…ちょっと記憶が曖昧^^;
食べたことがあるのは、シロップ漬けの杏。
杏は日頃あまり意識したことはないのですが
知人から梅を頂いたときに
杏っぽい梅だなぁ…というものがありました。
その梅は品種が定かでなかったのですが、
実が黄色(橙色)だったように記憶している
ので、かなり杏に近い品種だったのだと
思います。
もしくは、ほぼ杏だったのかも(笑)
いつか生の杏に出会ったら、
ぜひ食べてみたいものです。
それでは今回はこのへんで。
ここまでお付き合いくださいまして
ありがとうございます。
梅と杏の違い。
春の花も初夏の実も。
出会うことがあったら、
ぜひ観察してみてね~ヽ(´ー`)ノ