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「梅は金気を嫌う」
と聞いたことがあるでしょうか。
梅は金属を嫌います。
これは、梅には金属が厳禁ということ。
梅は金属製の道具を腐食させてしまうから、
金属製の道具は使ってはならないよ
ということなのです。
じゃあ、梅を漬けるときには
金属製の道具は一切使っちゃいけないのか?
すでに使っちゃったけど、
いけなかったかなぁ…?
そんな疑問や不安もあることでしょう。
金属製の道具を全く使わないようにできれば
何も心配することはないのですけど、
梅を漬けるためだけに、わざわざ別の道具を
用意したり、利便性を諦めてしまうのも
勿体無いし無駄が多い気がします。
出費は最小限で、利便性は最大限に!
そう思えばところどころで
金属製の道具を使うこともしますし、
実際のところ、金属製の道具であっても
少々なら使っても大丈夫なのです。
金属も種類や性質はいろいろあるので
違いなども調べて書いていきますが、
要は使い分けが肝心。
どんなときに使ってはいけなくて、
どんなときに使ってもいいのか。
その使い分けを知っておくといいですよ。
梅は金気を嫌う?
梅は金属を嫌う、
ということはすでに書きましたが…
ではなぜ金属を嫌うというのでしょうか。
梅の成分には、クエン酸を始めリンゴ酸
などの有機酸が多く含まれています。
このクエン酸は、レモンにも多く含まれる
酸っぱい成分。
つまり「酸」です。
酸性かアルカリ性かということを示す指数に
pH(ペーハー)がありますよね。
pH3.0未満は酸性
中性はpH7
pH11.0以上はアルカリ性
梅の成分はだいたいpH2くらいらしく、
酸性を示します。
この「酸」によって金属を傷めることが
あるので「梅は金気を嫌う」といわれるの
でしょう。
しかし「金属」といっても種類はいろいろ。
それぞれの性質も違います。
そこで次に、金属について
少し見ていくことにしましょう。
梅の酸によって金属は腐食するか
金属は総じて酸や塩分に弱いイメージが
ありますが、実際はどうなのでしょう?
金属と一口に言っても
いろいろな種類があります。
ですので金属が腐食する条件、
というのも種類により違います。
梅を漬けるとき、うっかり使って
しまいそうな道具といえば、台所用品。
その中で多く使われている金属は、
鉄、アルミニウム、銅、ステンレス鋼…
そのくらいでしょうか。
その性質と腐食について調べてみました。
鉄
鉄は多くの道具に使われていますが、
欠点は錆が出やすいこと。
鉄製品は油をしっかりなじませておかないと
すぐに錆が出てしまいますよね。
鉄のフライパンに少々の水滴を放置しても
すぐに錆が出るくらい。
なので、梅に使う道具としては
不可でしょう。
ちなみに鉄の錆は人体に入っても
特に問題はないそうです。
アルミニウム
一昔前はアルミ製の鍋が主流でしたが、
今でもよく使われているものですね。
軽くて熱伝導性がよく、
表面を加工されているので錆にくく
使い勝手がよいのでしょう。
しかしアルミニウムは、
酸にもアルカリにも弱く、長時間にわたり
接していると腐食してしまう。
つまり梅に触れ続けるという環境には、
全く向かないということです。
銅
銅は腐食しにくい耐食性の性質をもちますが
変色しやすく緑青が発生しやすい。
そのため、酸やアルカリ、塩分などと
長期に触れる環境は避ける必要が
あるようです。
なので梅の加工に使うには不向きですね。
ちなみに緑青は有毒だと言われた時期も
あったようですが、現在では人体に無害と
認められています。
ステンレス鋼
ステンレスは50%以上の鉄と
10.5%以上のクロムを含み、
耐食性を増した合金。
さらに耐食性を向上させるために、
ニッケルなどを加えたものもあります。
ステンレスも種類はいろいろとあるよう
ですが、その性質から腐食はしにくい。
ただし、長期間にわたり酸や塩分に
触れたまま放置すると
腐食することもあるようです。
梅に使える金属製品はあるの?
ここまで金属の種類ごとに
性質などを見てみましたが…
金属はそもそも
「長期にわたって食材に触れる」
ということ自体が向かないようです。
梅は酸性が強いのでなおさら。
使うとすれば、短時間の使用のみ。
それも腐食し易い金属ではよくないので、
使うならば、ステンレス製品が無難
でしょう。
補足。
琺瑯(ホーロー)製品は中が金属製ですが、
ガラスでコーティングされているので
ここでは外しています。
金属の道具の使い分け
梅を漬けるときには使っちゃいけない、
といわれる金属の道具。
しかしそれは時と場合によります。
冒頭でも書きましたが、
要は使い分けが肝心。
どんなときに使ってはいけなくて、
どんなときに使ってもいいのか。
金属の道具は使い分けをしましょう。
使っていいもの、よくないもの
まずは金属の道具のなかで、
使っていいものとよくないものを
認識しておきましょう。
【使っていいもの】
ステンレス製品
【使わないほうがいいもの】
ステンレス製品以外の金属製品
どの金属製品もあまり梅の作業には
使いたくないかな~というところですが、
ステンレス製品は、ある程度耐食性が
あるので、短時間の作業時の使用ならば
大丈夫です。
ただし、使い終わればすぐに洗うこと。
これだけは気をつけておきましょう。
使っていい場合、よくない場合
金属製品の道具は、使っていい場合と
使うとよくない…というより、
絶対に使ってはいけない場合があります。
それは主に、梅が金属製品と接触している
時間が関係します。
【使ってもいい場合】
短時間の作業時の場合
【使ってはいけない場合】
長期間にわたって梅と接触する場合
長期間にわたる場合というのは、
おもに梅を漬けるとき。
梅を長期間漬けるときの道具としては、
絶対に金属製品を使ってはいけないのです。
これをやってしまうと、
金属製の道具をダメにし、
梅もダメにしかねません。
【悪い例: 梅干しの漬け込み】
・梅を塩漬けにするときの容器が金属製
・重石を乗せる落し蓋(中蓋)が金属製
・重石が金属製
※全てやるのは最悪ですが、
どれか一つでもやっちゃダメですよ。
梅を漬ける容器はもちろんのこと、
落し蓋や重石も金属製のものは避けます。
重石は直接触れないから…と思っても、
梅を漬けて梅酢(梅の汁と塩分)が上がって
くれば、直接接触することもあります。
また、梅に直接触れていなくても、
酸や塩気に当てられて腐食することも。
梅干しに限らず、梅を漬け込むときには、
基本的に金属製の道具は使わないこと。
うっかりアルミホイルで蓋をするとかも
絶対にやめましょう。
アルミホイルなどは
梅酢に数日間漬けておくと
腐食して溶けてしまいます。
(実験しましたよ~)
具体的には何が使えるのか
次に、じゃあ具体的にはどんな場面で
どんなときに金属製の道具を使えるのか。
道具の使い方は人それぞれで
梅の漬け方によっても違うと思いますが
いくつかの例を参考までに紹介します。
ステンレス製のボウル
ステンレス製のボウルは
よくどこの家庭にもあるのでは。
うちは殆どのボウルがステンレス製。
なので梅の下処理などをするときにも
ほとんどコレを使います。
・梅を洗うとき
・梅の下処理時
このような一時的な容れ物として使うには
まったく問題なしです。
以前、ちょっとどうなのかな…と思ったのは
ステンレス製のボウルで梅を塩もみして、
そのまま1~2時間塩漬けのまま置いておいた
ことがありました。
見た目ではなんともなかったのですけど、
実際これはどうなのかな…と
ちょっと心配になりました。
短時間だったからまぁいいかなと。
数日間そのまま置く場合などは
ステンレス製でもやめたほうが無難ですね。
ステンレスといっても様々あるようなので、
気をつけるに越したことはないでしょう。
ステンレス製の道具であっても、
長時間の使用はやめておきましょう。
ちょっと補足ですが…例外として。
梅を洗うくらいの作業ならば、
アルミ製の金タライなどを使うのは
大丈夫だと思います。
何がダメで何ならどのくらい大丈夫なのか?
という線引きは難しいのですが、
梅を水洗いする場合、大量の水の中に
梅を泳がせるわけですし、梅の果汁や果肉
などに直接触れるものでもない。
そして短時間でもあります。
もし判断に迷うような場合には、使わない
という選択をするほうがいいでしょう。
ステンレス製の鍋
ステンレス製の鍋は使いやすいので
うちにある鍋もほとんどがこれですね。
梅の加工で鍋を使うのはこんなとき。
・梅シロップや梅味噌などに火を入れる
・梅の実でジャムを作る
などなど。
この場合にも長い間入れっぱなしにせず、
冷めたら早めに別の容器に入れ替えます。
そして使い終わったらすぐに洗えば大丈夫。
ステンレス製のフォーク
フォークって何に使うんだよ!
と思うかもしれないですが…
実はとても便利に使えます。
・梅に穴を開ける時
梅シロップを作るときなどには、
梅に穴を開けることがあります。
通常この作業には爪楊枝や竹串を使いますが
すぐに先が潰れて駄目になってしまいます。
そこでフォークを使うのですよ。
一度に複数の穴を開けられる上、
先が潰れることがないのです。
便利ですよね~(笑)
ステンレス製のおたま
おたま、あるいはレードル。
これは意外と使いますよね。
梅酒や梅シロップなどをすくったり
梅シロップや梅味噌などを火にかけたり
まぁいろいろ使う場面があるでしょう。
これも一時使うだけなので、
すぐきれいに洗えば全く問題ありません。
その他
ここまでひととおり、
ステンレス製品の思いつくものを
上げてみましたが…
基本的に、梅を加工する作業時の短時間
だけなら、使用後すぐに洗えば問題ない。
ただ、この一時的な作業時であっても、
ステンレス製品以外の金属の使用は
避けるほうが無難でしょう。
ちなみにもうひとつ。
金属製品で使う調理器具がありました…
それは包丁。
包丁は、梅に切り込みを入れたり、
半分にしたりくし切りにしたり…
梅の加工でたまにそんなのもあります。
道具に金物厳禁、といわれながらも
包丁は普通に使っちゃうのも
不思議なのですが…
普通に使います^^
まぁこれも一時的に使うだけですし。
そして使い終わったらすぐに
きれいに洗っておきましょう。
まとめ:梅の酸で金属を腐食させない
基本的には、
梅の加工時には金属を避けること。
しかし金属製の道具は台所に多くあり、
金属厳禁にするとなにかと不便です。
そこで金属製品の特徴を確認して、
使ってもいい金属と使ってもいい場合を
知っておきましょう。
【使ってもいい金属】
基本的にステンレス製品であること
【使ってもいい場合】
短時間の作業時の場合
※注意点
長期間に渡って梅と接触する状況では、
一切の金属製品は使わないこと。
梅を長期間漬け込むときなどは
絶対に使ってはだめですよ。
これはステンレス製品であっても同様。
ステンレス製品は
耐腐食性で強く作られてはいますが、
製品により強度は異なります。
また、長期的に酸や塩分などの内容物を
入れている場合に、保護皮膜が再生できず
錆が発生することもありえます。
うっかり使ってしまうと、
金属製の道具も傷めてしまいますが
梅もダメにしてしまうことになります。
金属製品を全く使わないで済むのなら
それに越したことはないのですが、
利便性などを考えれば、
しっかり使い分けをしていくほうが
何かといいでしょう。
今回はこのへんで。
ここまでお付き合いくださいまして
ありがとうございます。
うっかり梅ちゃんを
金気臭くしてしまわないように、
気をつけていきましょ~ヽ(´ー`)ノ~