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「こぼれ梅」というのを聞いたことがあるでしょうか。
数年前にはちょっとした流行りになったようです。
名前こそ「こぼれ梅」というのですが、じつは梅とはまったく関係のないもの。
今回はこの「こぼれ梅」について調べていきます。
1. こぼれ梅とは
1.1 名前の由来
1.2 みりん粕と酒粕
1.3 みりん粕は季節モノ
1.4 みりん粕の味
1.5 みりん粕の栄養成分
2. こぼれ梅の使い方
3. こぼれ梅の関連ばなし
3.1 落語
3.2 俳句
3.3 小説
4. 後記
それではひとつずつ、いってみましょ~^^
1. こぼれ梅とは
こぼれ梅とは、ある調味料を作る工程でできる副産物。
その調味料とは、みりん(味醂)。
みりんの搾り粕(かす)のことを「みりん粕」といい、これを「こぼれ梅」と呼ぶのです。
1.1 名前の由来
「みりん粕」なのに「こぼれ梅」
なぜこのような呼ばれ方をするのでしょう。
その由来は、その見た目から。
みりん粕は白く、ほろほろとした状態。
それはまるで、白梅の花がこぼれ咲くように見えることから。
昔の人は風流ですねぇ。
みりんの起源は諸説あり、定かではない。
しかし、江戸時代にはすでに使われているもの。
江戸時代には、数々の料理本が出版されているのです。
そこに、みりんを使ったものが多数紹介されています。
そしてみりんの搾り粕である、こぼれ梅。
これも「和漢三才図会」という書物に、甘い菓子として記載されています。
「和漢三才図会(わかんさんさいずえ)」とは、1712年、大阪の医師・寺島良安が編纂。
百科事典のようなもので、30余年をかけて105巻81冊にまとめられた。
(Wikipediaより)
1.2 みりん粕と酒粕
みりんは、そもそもお酒として飲用されていたもの。
これが時代とともに少しずつ様態を変え、調味料として用いられる。
みりんと酒、似てはいるが少々違う。
材料と製造方法が違うが、なんとも似た者同士です。
〔みりんの原材料〕
もち米・米麹・焼酎(アルコール)
みりんの製造では、材料に焼酎(アルコール)を加えて作る。
もち米が糖化・熟成されて甘みが出る。
これを搾り残ったかすが、みりん粕。
〔日本酒の原材料〕
米・米麹・水
日本酒の醸造では、お米が糖化・発酵してアルコールになる。
これを搾って残ったものが、酒粕。
1.3 みりん粕は季節モノ
みりん粕は、出回る量が少ないようです。
それというのも、昔ながらの伝統的な製法でみりんを作る酒蔵さんが少なくなったため。
みりん粕は季節モノ。
みりんを仕込むのは、年に一・二度、時期は春先か秋頃。
みりんを搾る時期は、冬季や春先、初夏など。
酒蔵さんにより(もろみの状態により?)違うようだが、季節限定で期間限定のものなのです。
そして、みりん粕は地域モノ。
みりん粕は、全国で馴染みがあるものではないため、お店などで扱われているのは、一部地域のみ。
関西や東海地域などに多いもようです。
近くに酒蔵さんがあれば、聞いてみるのもいいでしょう。
近くで手に入らない場合には、ネット通販が強い味方!
手に入りにくいと言われていますが、数年前のブームもあってか、意外とネットで販売されています。
ただ、やはり季節モノなので、入手したい方は、いつごろ販売が開始されるのか、頃合いを見ておきましょう。
1.4 みりん粕の味
みりん粕の味は、甘みがある酒粕のようなもの。
しかし板状の酒粕のように硬いものではなく、ほろほろと崩れる。
そのままつまんで食べるもよし、焼いて食べるもよし。
料理やお菓子作りに使うもよし。
ただ、そのまま食べるときには注意!
アルコールを含むため、アルコールに弱い方、運転予定の方や、アルコールにアレルギーを持つ方などは気をつけましょう。
軽く火を通してアルコールを飛ばすと、子供にも手軽に食べられるおやつになります。
1.5 みりん粕の栄養成分
みりん粕には栄養成分が豊富に含まれているといいます。
なかでも注目されるのが、レジスタントプロテインというもの。
これは食物繊維と同じ性質をもつ、タンパク質の一種。
みりん粕だけでなく、酒粕にも含まれている。
レジスタントプロテインは、消化管を介してのコレステロール低下、抗腫瘍、脂質代謝の改善などに作用する機能があるとして、日本健康医学会で報告されている。
また、便秘の改善にもよいようです。
2. こぼれ梅の使い方
こぼれ梅の使いみちは、意外といろいろあるようです。
◇使い方1・そのまま
こぼれ梅はそのまま食べられる。
あるいは適当に形成し、軽く焼いていただきます。
こぼれ梅には甘みがあり、そのままでおやつになるのです。
◇使い方2・酒粕の代わりに
こぼれ梅と酒粕は似ている。
こぼれ梅の使い方として、酒粕と同様に考えていいようです。
酒粕を使うレシピに、こぼれ梅を使う。
それだけで、いつもとはまた違った味わいになるでしょう。
こぼれ梅と酒粕とは近い存在なので、相性もいいようです。
酒粕料理だけでなく、漬物などにも使えます。
ただ、こぼれ梅には酒粕にない甘みがあるので、そこは調整を。
◇使い方3・甘みの代わりに
酒粕に砂糖を入れず、こぼれ梅とで、甘酒に。
砂糖の代わりに、こぼれ梅で甘みを入れるのです。
他にもスコーンやクッキー、ケーキなどのおやつに。
こぼれ梅を使ったスイーツレシピは沢山あるようです。
こぼれ梅は、酒粕ほど馴染みがないという方は沢山いるでしょう。
しかし意外にも使いみちは幅が広いようなので、入手できるならいろいろと試してみるといいですね。
3. こぼれ梅の関連ばなし
「こぼれ梅」は古くからあるもの。
こぼれ梅に関係する話がいくつかあります。
3.1 落語
上方落語の古典「鷺(さぎ)とり」
この噺(はなし)の中に、こぼれ梅が登場します。
男が金儲けのために、鳥を捕まえようとして失敗する顛末の噺。
男は雀(すずめ)・鶯(うぐいす)・鷺(さぎ)を捉えようとする。
その雀の場面。
「こぼれ梅」を餌として庭にまき、それを食べた雀は酔っぱらって眠くなる。
そこへ南京豆(落花生)を転がせば、雀は南京豆を枕にして寝てしまう…というもの。
これはもちろん失敗する。
なお、上方落語では「こぼれ梅」
これが東京では「三日三晩みりんの中に漬けておいた米」となっている。
これはみりん文化の違いか、みりん粕をこぼれ梅とは呼ばなかったものなのか、こぼれ梅に対する認識の違いからなのか…。
いろいろと想像してみるのも、また楽しいものです。
落語は地域によって、また語る人によって内容が違うことも多々あります。
Youtubeに、いろいろな落語家さんの語りが出ているので、話の違いを聴き比べてみてはいかがでしょう。
3.2 俳句
俳句に「こぼれ梅」という言葉が使われています。
一見、季語なのかなと思いきや、しかしこれは季語ではないようで。
どうやら二通りの意味で使われているようです。
「こぼれ梅」
味醂の搾り粕である、みりん粕を表している。
「こぼれ梅」あるいは「零(こぼ)れ梅」
梅の花が散りこぼれるさまを表現しているもの。
3.3 小説
この小説にも「こぼれ梅」が登場する。
高田郁著「みをつくし料理帖」
江戸時代。若い女性の料理人、澪(みお)の話。
こぼれ梅は、主人公と幼馴染の思い出のおやつ。
そして、こぼれ梅を使ったレシピも出てきます。
『麗しの鼈甲珠(べっこうだま)』
こぼれ梅と味噌を合わせて漬け床にし、卵黄を漬け込んだもの。
「残月 みをつくし料理帖」に出てきます。
この小説はドラマ化されたり映画化されたりしているので、ご存じの方も多いでしょう。
物語がいいのはもちろんのこと、出てくる料理がすべて美味しそうなので、興味のある方はぜひ御覧くださいな。
4. 後記
今回は「こぼれ梅」について調べてみました。
こぼれ梅=みりん粕
文中、前半は主に「みりん粕」
後半は主に「こぼれ梅」で統一し、書き進めました。
片方だけで呼んでいると、片方を忘れそうなので…^^;
みりん粕は、みりん粕を搾った後に残される粕。
だけど、この粕にはとても豊富な栄養が含まれています。
搾り粕といえど、カスと言うにはもったいないものですよね。
こぼれ梅は、全国で普通に売っているというものではないので、近場ではなかなか手に入らないもの。
そしてネット通販でも、常時販売しているものではないのです。
地域により、酒蔵によって販売時期が違うようですから、頃合いを見て確認しておくといいでしょう。
それでは今回はこのへんで。
ここまでお付き合いくださいましてありがとうございます。
あなたのお目当ての「こぼれ梅」に出会えるといいですねヽ(´ー`)ノ