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梅に鶯。この聞き慣れた言葉には、一体何があるのでしょう。

この記事を読むのに必要な時間は約 13 分です。

梅に鶯(うぐいす)
竹に虎
牡丹に唐獅子

植物と動物とを合わせた、
このような言葉を聞くことがあります。

もしくは古い絵などの題材として
よく見かけることもあるでしょう。

これらを見ると、

なんだか風流。
古典だなぁ。
掛け軸とか屏風のことかな。

いろいろと思いますが、
そもそもこれって一体なんなのでしょうか。

実はこれ、
ものの取り合わせであり、
よく合うものの例として
昔から組み合わせられていたものなのです。

その中でもとりわけよく耳にするのは、

「梅に鶯」

この言葉について主に調べてみますよ。

それでは、いってみましょ~。

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梅に鶯とは

「梅に鶯」
うめにうぐいす

意味としては、以下のようなことです。

・仲がよいもののたとえ。
・よく合うもののたとえ。

・組み合わせがさまになるもの。
・取り合わせがよく調和する2つのもの。

・素材としての美しい組み合わせ。
・絵画などで組み合わせがいいもの。

・文様のお決まりの柄。
・花札に使われている柄。

「梅」と「鶯」は、
それぞれ春の訪れを感じさせる
象徴としての要素を持っている。

また、この2つの取り合わせが
さまになるものであることから、
和歌などにも詠まれていた。

梅と鶯は別の名称を複数持つが、
どちらも春を冠しているのです。

・梅:春告草(はるつげぐさ)
・鶯:春鳥、春告鳥(はるつげどり)、
報春鳥(はるつげどり)など。

類似語いろいろ

「梅に鶯」と同じような意味合いとして、
さまざまな組み合わせがあります。

その一部の言葉を簡単にご紹介します。

・松に鶴

松(葉)も鶴も縁起のいいものとされ、
その取り合わせ。
花札の1月の札にある。

・紅葉(もみじ)に鹿

取り合わせのよいもののたとえ。
花札では10月の札。

この取り合わせの由来は、
興福寺の「十三鐘」伝説からといわれている。
(痛ましい話。詳しくはググってくだされ)

・竹に虎

取り合わせのよいもののたとえ。
組み合わせのよい絵図としてよく描かれる。

竹藪(やぶ)は虎にとって安住の地。
(象から身を守るために逃げ込む場所として)

・牡丹に唐獅子

取り合わせのよいもののたとえ。
組み合わせのいい図柄で、
襖や屏風などによく描かれる。

牡丹の花の下は、獅子にとって安息の地。
唐獅子は、唐(中国)の獅子。

獅子は身中の虫が恐ろしいが、
牡丹の夜露で静まるため
牡丹の下で眠り、牡丹の花を食す。
(仏教から由来する言葉「獅子身中の虫」)

・牡丹に蝶

取り合わせのよいもの。
花札では6月の札。

牡丹は百花の王であり、富貴の花。

蝶は中国では吉祥の象徴と考えられ、
また、生涯に何度も変態することから、
回生と復活の象徴ともされたようです。

牡丹も蝶も、家紋などにも使われている。

・柳に燕(つばめ)

取り合わせのよいもの。
絵として調和するもの。

柳は春の季語。燕は春を告げる鳥。
組み合わせの季節としては春から初夏あたり。

花札では11月の札で、季節に一致しない。
なぜ11月の札なのかは不明のようです。

・波に千鳥

取り合わせのよいもののたとえ。
絵になるもの。定番の文様のひとつ。

波間を飛ぶ千鳥が形式的に描かれ、
可愛らしいため現代でも人気の柄の一つ。

これらの取り合わせは、実際の景色に
見られるものということではなく、
「梅に鶯」と同じように、よく似合うもの、
調和するものとして扱われる。

梅に鶯の由来

「梅に鶯」は、
概念もそのままに中国からやってきて、
日本に根づいたのだという説があります。

そしてさらに調べてみると、
それは違うという説もありました。

中国・唐の時代。
花鳥を題材にした漢詩には、たしかに
梅と鶯を詠ったものがあったようです。

しかしとりわけ数が多いわけでもなく、
唐で特に好まれたということもなかった
ようなのです。

ならば梅と鶯という取り合わせに注目し、
好んで使い、「梅に鶯」といわれるほどの
定番にまでさせたのは、日本人の感性
だということになります。

たとえ漢詩からの影響があったとしても、
梅と鶯の取り合わせは日本で注目され、
根付いたものなのだというほうが
自然のような気がします。

また、中国の「鶯」という鳥と、
日本でいう「鶯」は同じではないようです。

中国の鶯

中国の「鶯」:コウライウグイス
スズメ目コウライウグイス科

【姿】
全長:26cm
(日本の鴬より10cmは大きい)

全身が鮮やかな真っ黄色。
目の周囲から後頭部にかけてが黒い。
風切羽と尾羽の色合いが、黒→黄色の
グラデーションになっている。
くちばしはピンク色で、目は赤い。

(赤目というと、花札の「梅に鶯」の絵を
思い出します)

【鳴き声】
さえずり:ヒュヒュヒュリュリョ、
ヒュリョリロ、ヒュヒョーなど。
口笛のような音。

地鳴き:ギャー、ニ゛ャー

コウライウグイスのさえずりも、
何度も聞いてみると、耳慣れて心地よい。
地鳴きの声は、猫が怒ってるときの鳴き声に
似て、少々やかましく聞こえます^^;

どのみち、コウライウグイスの鳴き声は、
日本の鶯とはずいぶん違うものです。

YouTubeにコウライウグイスと日本の鴬、
どちらの鳴き声もあったので
ぜひ聴き比べてみてくださいな。

日本の鶯

日本の「鶯」:ウグイス

スズメ目ウグイス科ウグイス属

【姿】
全長:オス16cm・メス14cm

全身の上部は茶褐色。
腹などの下部は、浅い灰褐色。

目は黒く、目の上部には白い線が入る。
少し丸っこくて、尾羽根が長い。

全体にとても地味な色合いで、
いかにも隠れて暮らすタイプの鳥。

【鳴き声】
さえずり:ホーホケキョ(オス)
地鳴き(笹鳴き):チャッチャッ
谷渡り:ケキョケキョケキョケキョ…(オス)

日本の鶯の鳴き方、特にさえずりは有名。
一度聞いたら忘れないくらいに特徴的。
美しく通る声で、とても印象に残るのです。
谷渡りの声もいいですねぇ。

もちろん個体差があって、
上手い下手がありますけど、そこはご愛嬌^^
聴き比べてみるとなかなか面白いものです。

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日本での梅と鶯

日本では漢詩に始まり、和歌となっても
「梅に鶯」の取り合わせが使われている。

そして時代ごとに表現の形態を変えつつ、
詠われてきたようです。

代表的な和歌集等の名前を書いておきますね。

歌の詳細については割愛^^;
専門のサイトさまを訪れたほうが
より深く知ることができるでしょう。

奈良時代

「梅花の宴」
730年。大伴旅人が太宰府の邸宅で
梅花の宴を催した。
多くの梅花の和歌が詠まれ、ここから
32首が万葉集に掲載されている。

『懐風藻(かいふうそう)』
751年。現存する日本最古の漢詩集。
梅と鴬の詩が詠われている。

『万葉集(まんようしゅう)』
759-781年頃。全20巻、4536首の和歌集。
うち、梅が119首、鶯が51首。
このうち梅と鶯、あるいは花(※)と鶯は15首。

※当時「花」といえば梅を指す。

平安時代

『古今和歌集(こきんわかしゅう)』
905-914年頃。醍醐天皇の勅命による編纂。
全20巻、1095首。
うち梅が24首、鶯が28首。梅と鶯は6~8首?※
※数については違うかも…^^;

この頃「花」は、ほぼ桜であるようですが
梅だったりもする過渡期であったようです。

『後撰和歌集(ごせんわかしゅう)』
955-957年。村上天皇の下命による編纂。
全1425首。
うち梅が17首、鶯が17首。梅と鴬は1首?

『拾遺和歌集(しゅういわかしゅう)』
1005-1007年。勅撰和歌集の3番目。
全1360首。
うち梅が30首、鶯が23首。梅と鴬は2-3首?

「鶯宿梅(おうしゅくばい)」
拾遺和歌集、大鏡などに収録されている故事。
村上天皇の時代においての、梅と鴬にまつわる話。

実際の梅と鶯は

「梅に鶯」

梅の花と鶯の取り合わせは、
「春の到来を告げるめでたい組み合わせ」

ということであって、
実際、梅の花の時期に「梅の木に鶯が居る」
ということではないのです。

梅の花が咲くのはだいたい、1月~3月の頃。

梅は早春の頃に花を咲かせ、
花が散ってから葉が出てくる。
葉は秋の頃に全て散り、また春を待つ。

花の頃に梅に来る鳥たちは、梅の花の蜜や、
梅の木に来る昆虫を目当てに寄ってくる。

【梅の花の時期にやってくる鳥たち】
◇鳥の名称:お目当ての餌

・メジロ(目白):花の蜜、木の実、虫
・ヒヨドリ(鵯):葉や芽、花、蜜、木の実、虫

・シジュウカラ(四十雀):花、蜜、木の実、虫
・ジョウビタキ(尉鶲):木の実、虫

・スズメ(雀):木の実、花の蜜※
※桜は花をちぎって(中の蜜を?)食べる。
梅の花もちぎるが、食べているのかは不明。

・ムクドリ(椋鳥):花の蜜、木の実、虫
・ツグミ:木の実、虫

けっこうな賑わいですね。

鶯の生態からすると、梅の木にはあまり
用はないのかなぁ~という感じです。

【餌】
虫や木の実など

【好む環境】
笹薮(やぶ)など、身を隠せる場所。

鴬が梅の木の枝に来るとすれば、
葉がよく茂っている時期。

そこにいる虫などを捕食するために
来ることはあるようです。

花の時期の梅の木は、葉がないために
見通しがよく、隠れる場所がない。
鶯としては、あまり訪れたくはないでしょう。

鶯が春先にホーホケキョと囀(さえず)るのは、
求愛行動のための一時期のみ。
梅の花は、丁度この頃に咲いている。

声はすれど、姿は見えず。
これはウグイスの生態から、常に外から
見えづらい場所に隠れているためなのです。

メジロ

春先、梅の花咲く枝によく見かける姿は、
花の蜜を目当てにやってくるメジロ。

一般的によく見られる景色は、
「梅にメジロ」ということなのです。

メジロは頭と背、翼は黄緑色。
腹は白っぽい色をしており、
目の周りはぐるりと白く縁取られている。

見た目もとてもわかりやすい鳥。

ホーホケキョと鳴く声が聞こえたが、
姿を見せるのは、メジロ。
ということもよくあるようですね。

ちなみにメジロの鳴き声は、
チューチュチュン、チュチュチュー…
長く複雑に、けっこうせわしなく鳴きます。

やはり鶯とは雰囲気がまったく違いますね。

後記

さて今回は「梅に鴬」

たとえ他国から来たものであったとしても
日本で定着し育ったものならば、
そこに日本人の想いが入って熟成され、
日本の文化となっていくわけなのです。

梅に鴬、すでにとても長い時間を
ともにしているわけなのですから。

日本の風流。

梅の花咲く頃に、聞こえてくる鶯の声。
やはり春を告げるものとして
風流を感じさせる。

それは、日本の鶯だから。

「梅に鶯」の取り合わせが定着したのは、
少なくとも日本では、日本においての
「梅と鶯」だったからこそ。

そう考えるのが自然ではないのかなと
思うのです。

真実はもはやわからないので、
私が勝手に思うに過ぎないことなのかも
知れないですけどね。

ということで、長くなりましたが
今回はこのへんで。

ここまでおつきあいくださいまして
ありがとうございます。

梅に鶯。

おだやかな春の日を、いつまでも無事に
迎えることができますようにヽ(´ー`)ノ

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