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「梅といえば紀州」ということを見聞きます。
紀州の梅というと、和歌山県は田辺や南部(みなべ)地方で梅の生産が盛んです。
和歌山県は日本一を誇る梅の生産地ですが、その他にも梅を生産している場所は多く、さまざまな品種が作られています。
では和歌山県以外ではどこで生産されているのでしょう。
また、各地で生産されている梅の品種には、どんなものがあるのでしょうか。
今回は、このあたりについて調べていきます。
1. 全国の産地と生産品種
1.1 北海道・東北地方
1.2 関東地方
1.3 北陸・甲信越地方
1.4 東海地方
1.5 関西地方
1.6 中国・四国地方
1.7 九州地方
2. 産地と地域特有の品種
3. 後記
ではいってみましょ~。
1. 全国の産地と生産品種
生産量は多かれ少なかれ、梅の産地は全国にある。
そして産地によって、作られている品種は異なります。
あれこれ調べているなかで、政府の統計情報がありました。
農林水産省の「平成29年産特産果樹生産動態等調査」
政府統計の総合窓口(e-Stat)より。
この統計情報を元に、各都道府県ごとに品種を書き出してみました。
各地域でいろいろな品種が作られているのがわかります。
1.1 北海道・東北地方
北海道 | 大野豊後 |
青森県 | 小梅・古城・高田梅・節田・大野豊後・南高・白加賀・豊後 |
岩手県 | 白加賀・豊後 |
宮城県 | 前沢小梅・甲州最小・甲州小梅・小梅・竜峡小梅・越の梅・鶯宿・玉英・藤五郎・南高・梅郷・白加賀・豊後・養老 |
秋田県 | 越の梅・藤五郎・豊後・大屋梅 |
山形県 | 甲州小梅・小梅・高田梅・節田・谷沢梅・藤五郎・南高・白加賀・豊後・おばこ梅 |
福島県 | 小梅・竜峡小梅・高田梅・南高・梅郷・白加賀 |
1.2 関東地方
茨城県 | 小梅・織姫・露茜・稲積・玉英・高田梅・石川1号・南高・梅郷・白加賀 |
栃木県 | 小梅・南高・白加賀 |
群馬県 | 甲州最小・甲州小梅・小梅・織姫・鶯宿・月世界・南高・梅郷・白加賀・紅養老 |
埼玉県 | 甲州最小・小梅・紅梅・十郎・南高・白加賀 |
千葉県 | 甲州最小・小梅・玉英・小粒南高・石川1号・藤五郎・南高・白加賀 |
東京都 | 小梅・鶯宿・南高・梅郷・白加賀・豊後 |
神奈川県 | 甲州最小・甲州小梅・小梅・竜峡小梅・稲積・鶯宿・玉英・十郎・南高・梅郷・白加賀・豊後 |
1.3 北陸・甲信越地方
新潟県 | 越の梅・藤五郎 |
富山県 | 稲積 |
石川県 | 紅サシ・石川1号・南高 |
福井県 | 新平太夫・福太夫・剣先・紅サシ |
山梨県 | 甲州小梅・小梅・高田梅・白加賀 |
長野県 | 小梅・信濃小梅・竜峡小梅・吉村小梅・三尾紅梅・緑宝・改良内田・大梅・南高・白加賀・豊後 |
1.4 東海地方
岐阜県 | 甲州小梅・小梅・玉梅(青軸)・改良内田・古城・藤五郎・南高・白加賀 |
静岡県 | 宮口小梅・改良内田・紅梅・大梅・南高・白加賀 |
愛知県 | 甲州最小・小梅・玉梅(青軸)・鶯宿・改良内田・玉英・長束・南高・白加賀・佐布里梅 |
三重県 | 五ヶ所小梅・小梅・竜峡小梅・鶯宿・改良内田・古城・小粒南高・南高・白加賀・豊後 |
1.5 関西地方
滋賀県 | 南高・白加賀・城州白 |
京都府 | 小梅・南高・白加賀・城州白 |
大阪府 | 甲州最小・小梅・鶯宿・南高 |
兵庫県 | 竜峡小梅・鶯宿・玉英・南高・白加賀・豊後 |
奈良県 | 甲州最小・小梅・玉梅(青軸)・鶯宿・玉英・古城・紅サシ・南高・白加賀・林州 |
和歌山県 | パープルクイーン・白王・紅王・甲州小梅・小梅・竜峡小梅・NK14・露茜・みなべ21・鶯宿・改良内田・古城・小粒南高・大梅・南高・白加賀 |
1.6 中国・四国地方
鳥取県 | 紅サシ・大梅・豊後 |
島根県 | 甲州最小・甲州小梅・小梅・竜峡小梅・鶯宿・南高・白加賀 |
岡山県 | - |
広島県 | 玉梅(青軸)・鶯宿・玉英・紅梅・南高・白加賀・豊後 |
山口県 | 竜峡小梅・鶯宿・玉英・大野豊後・南高・白加賀 |
徳島県 | 甲州最小・甲州小梅・小梅・信濃小梅・竜峡小梅・玉梅(青軸)・鶯宿・月世界・南高・白加賀・林州 |
香川県 | 甲州最小・伊那豊後・鶯宿・大野豊後・南高・白加賀・豊後 |
愛媛県 | 甲州小梅・七折小梅・小梅・竜峡小梅・鶯宿・古城・南高・白加賀 |
高知県 | 鶯宿・紅梅・南高・白加賀 |
1.7 九州地方
福岡県 | 光陽・小梅・伊那豊後・鶯宿・玉英・古城・南高・白加賀・豊後 |
佐賀県 | 光陽・小梅・竜峡小梅・古城・大梅・南高・白加賀 |
長崎県 | 甲州最小・甲州小梅・竜峡小梅・南高・白加賀 |
熊本県 | 甲州最小・露茜・玉梅(青軸)・玉英・南高・梅郷・白加賀 |
大分県 | 前沢小梅・光陽・甲州小梅・七折小梅・小梅・信濃小梅・竜峡小梅・伊那豊後・緑宝・露茜・玉梅(青軸)・鶯宿・小粒南高・南高・白加賀・豊後・南光 |
宮崎県 | 甲州最小・竜峡小梅・鶯宿・玉英・小粒南高・南高・白加賀・豊後・光友1号 |
鹿児島県 | 鶯宿・改良内田・玉英・小粒南高・藤五郎・南高・白加賀・豊後 |
沖縄県 | - |
以上。
この調査で品種の記載がなかったのは、岡山県と沖縄県でした。
しかし両県についても、平成26年(2014年)の全国の統計では、収穫量が出ているので梅の生産はされているようです。
2. 産地と地域特有の品種
なかには希少な、その土地にしかない地域特有の品種などもあるようです。
さきほどの統計で、一つの県でのみ記されている品種をまとめてみます。
〔東北地方〕
宮城県:養老
秋田県:大屋梅
山形県:谷沢梅(やさわうめ)・おばこ梅
養老梅は和歌山県が原産。
よく聞く品種と思っていたのですが、統計であがっているのは宮城県のみ。
養老は梅干しや梅酒に。
谷沢梅は梅干しに最適、おばこ梅は何にしてもいいようです。
〔関東地方〕
群馬県:紅養老
紅養老は、カリカリ梅や梅干しに。
〔北陸・甲信越地方〕
長野県:吉村小梅(飯田小梅)・三尾紅梅
福井県:新平太夫・福太夫・剣先
吉村小梅はカリカリ梅に、三尾紅梅は梅干しや梅酒などに。
新平太夫は梅干し、福太夫は何にでもよく、剣先は梅酒に最適。
〔東海地方〕
静岡県:宮口小梅
愛知県:長束(なづか)・佐布里梅(そうりうめ)
三重県:五ヶ所小梅
〔関西地方〕
和歌山県:パープルクイーン・紅王(べにおう)・NK14・みなべ21
パープルクイーン、紅王は小梅。
パープルクイーンは果肉が橙色で皮は紅い、変わり種。
梅酒や梅シロップにすると、エキスが紅く色づく。
〔九州地方〕
大分県:南光
宮崎県:光友1号
今回参考にした平成29年の統計に記載されているものでは、以上です。
統計にあがっていない品種や地域も、もちろんあるでしょう。
一定量がないと調査対象に上がらないため、記録にはないのです。
また、品種名があがっていても、他へ出荷されたり加工に回されたりするので、必ずしも地元に出回るものでもないようです。
お目当ての品種が地元で手に入らない場合は、産地直送などの通販を利用されるといいでしょう。
3. 後記
梅の産地で取り扱う品種は、地域ごとに特色がある…はず。
農産物というのは、その土地に適した品種が作られているというイメージがあります。
しかし現代では、流行りなどが先行して人気の品種を取り入れるという風潮にあるといいます。
何でもそうですよね。
売れ筋や人気のものを取り扱うというのは、商売上よくあることです。
するとその土地の土壌や地形、気候に合わないものを育てることになる。
そのため病気になりやすく、薬剤が増えるという悪循環に陥ることもあるようです。
適材適所ということが、植物にもあるわけですね。
昔はそれぞれの地域に合ったものを作り、それが特産品という形で楽しまれていたという話を聞いたことがあります。
だからこそ知らない場所へ行くと、全く違う景色に出会えたりする。
今ではどこへ行っても、どこかで見たようなものばかり。
町並みもお土産屋さんも取り扱う品々も、なんだか同じようで物珍しさがあまり感じられない。
令和の時代に入り、これからどんどんいろいろな技術が発展していくのでしょう。
しかし地域の環境や人の意識は、自然回帰を望んでそちらへ動いているような気がします。
新型コロナウィルスの広がりから社会活動が制限され、ものの見方や常識が大きく変わる。
さまざまな面でよりよい方向へ世界が移っていくといいなと思います。
話が大きくそれましたが、このへんで。
ここまでお付き合いくださいましてありがとうございます。
梅の産地は全国に、あなたの身近にあるのよ~んヽ(´ー`)ノ